[2022上期]データから見る中国の電気自動車のバッテリ交換ステーションの現状

電気自動車の2022年の生産・販売台数が急増している中国ですが、バッテリ交換方式の電気自動車の為のバッテリ交換ステーションの整備も政府の後押しを受けて着実に進んでいます。中国の2022年上期のバッテリ交換ステーションの現状を数字とともに見ていきます。

※この記事は以下の記事を基にブルースカイテクノロジー株式会社が執筆しています。
2022年中国新能源汽车换电行业市场前景及投资研究报告(简版)-中商情报网 (askci.com)

アイキャッチ画像:NIOのバッテリ交換ステーション (NIOのHPより転載)

電気自動車のバッテリ交換ステーションとは

通常、電気自動車に充電プラグを直接挿して充電する方式が一般的ですが、バッテリ交換式の電気自動車はバッテリの残量が少なくなった車両のバッテリをバッテリ交換ステーションで充電済みのものと交換します。取り外されたバッテリは充電ステーションで充電され、次の交換に使われます。中国では乗用車のバッテリは下から交換し、商用車のバッテリは側面から交換することが一般的なようです。蔚来(NIO)のバッテリ交換ステーションは3分で交換が可能、奥动(Aulton)のバッテリ交換ステーションは乗用車が20秒、商用車が1分で交換が可能と公表しています。

NIOのバッテリ交換シーン (NIOのHPより転載)

バッテリ交換式の車両及び交換ステーションに対する政府の支援

電気自動車の「安全性」、「充電のしにくさ」、「充電の遅さ」については、中国国内でも消費者側の関心事となっています。これらの課題の解決策としてバッテリー交換式の電気自動車が期待されており、バッテリ交換式の電気自動車とバッテリ交換ステーションの発展を支援するため、中国政府はさまざまな政策を導入しています。

例えば2020年4月には财政部、工信部、科技部より新エネルギー車が補助金を受けるためには車両の価格が30万元以下であることを規定する政策を発表していますが、バッテリ交換式の新エネルギー車にはこの条項は適用されないことになっています。

そして、2022年6月24日に、交通部など4部門が共同で「中共中央委員会と国務院が国内産業の発展の方針として、カーボンニュートラルに対する取り組みをしっかりと行っていく」という内容を発表しています。その意見書の中では、交通機関の電化代替を強化すること、港湾における船舶の陸上電力利用を促進し、陸上電力の利用率を継続的に向上させること、高速道路サービスエリアでの急速充電器ネットワークの構築とバッテリー交換ステーションの設置を推進することが記載されています。 中国政府としてこのバッテリ交換産業の発展を後押しする姿勢が見てとれます。

バッテリ交換ステーション市場の動向

バッテリの交換ステーションの市場規模は2022年末に61億元になると予測されています。2020年から2021年にかけて27億元増加しており、2022年も同様に20億元規模の市場規模の増加が見込まれています。バッテリの交換ステーション数は2022年に1900か所になると予測されており、順調な伸びを示しています。

一方で2021年バッテリ交換ステーションの数を地域別にみると、大きな開きがあり、北京、広東省、浙江省で全体の1/3以上の設置数となっています。通常のEVが増えてくると個々の電気自動車の充電タイミングにより、電気の需要がひっ迫する可能性がありますが、バッテリ交換システムのEV及びバッテリ交換ステーションは充電タイミングをある程度コントロールできることから、電気需要のひっ迫の回避方法としても注目されているようです。

現在、バッテリ交換ステーションの主要3社は蔚来(NIO)、奥动(Aulton) 、杭州伯坦(Botann)の3社が携わっています。2021年にはNIOが2020年比で3倍以上となる789局、Aultonが402局、Botannが107局建設する予定となっています。 3社合計で92.3%を占めています。政策の後押しにより、電気自動車のバッテリ交換産業はさらに発展し、競争が激化していくと予想されています。

あとがき

バッテリ交換方式は当然のことながら車両の台数よりもバッテリの台数が多くないと成立しないため、高価なリチウムイオンバッテリが大量に必要となり、ビジネス的に成り立たせるのが難しい側面があります。ベタープレイスの失敗が有名な例として挙げられます。

世界一のバッテリの生産能力を有し、バッテリのリサイクルを政府の支援のもと強力に進めている中国は、このバッテリ交換システムにより大きなバッテリの需要を国内に発生させ、バッテリの生産・消費・リサイクルを通した巨大なリチウムイオンバッテリのエコシステムを構築しようとしている様に見えます。

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