EVを取り巻く2023年に向けて

年が明けて世の中も動き始めまして、早速、ソニーホンダモビリティからはCESでの試作車の公開のニュースが飛び込んで来ました。EVについては販売台数で明らかに後塵を拝している日本市場ですが、日産SAKURAのカーオブザイヤーの受賞等もあり2023年はそれなりの伸びを示すのではないかと予想しています。
今回は、ブルースカイテクノロジー矢島の個人的な意見も交えて、今年の北米市場と欧州市場を中心にポイントとなる動きについて考えてみたいと思います。

欧州市場:電動化シフトが進んでいる。2022/11は中国よりドイツのほうが電気自動車の販売数が多かった

Volkswagen ID.4 (掲載元:volkswagen公式HP)

マークラインズの販売台数データベースによれば、2022年11月における電気自動車の販売シェアは、中国で35.1%に達していますが、驚くことにドイツが39%となっています。宏光MINIのような小型EVが存在しないドイツにおいて、39%という数字は欧州のユーザーが本当にEVへシフトし始めたことを表していると感じます。 日本のEVのシェアは2%程度であり、日本に居ればほとんどEV化の波は感じられませんが、中国はもちろんのこと、欧州においても電動化シフトが起きていることが実感できます。

北米市場:インフレ抑制法(IRA)の影響が大きく、北米の地場メーカ以外は準備の年

Ford F-150 LIGHTNING (掲載元:Ford 公式HP)

今年最も注目すべきは北米の動きです。GM、Ford、Chrysler(Stellantis傘下のブランドとして)がそれぞれピックアップトラックを含むEV車種を投入するとしており、北米におけるテスラの70%近いEVシェアにどこまで迫れるかが注目されます。

インフレ抑制法の影響①:組み立て車への影響

今後の北米EV市場を考える上で注意しなければならないのは、昨年8月にバイデン大統領が署名したインフレ抑制法(IRA)です。この法案ははEVを新車で購入した消費者向けの税額控除に「車両の最終組み立てが北米(アメリカ・カナダ・メキシコ)で行われていること」という条件をつけています。中国メーカの排除を狙いとしていますが、結果的に同盟国の自動車メーカに関しても影響が及ぶと思われます。

現在、北米でEVを生産しているのは日産のみで、その他のメーカも北米でのEV生産を早急に開始する必要があり、2023年はこのための準備の年となると思われます。

インフレ抑制法の影響②:バッテリ素材への影響

また、IRAは原材料についての制約もかけており、今後の北米向けのリチウムイオン電池の素材を誰がどのように準備するのかもポイントとなります。この素材の供給は電池業界ではリスクであると同時にオポチュニティでもあるとも考えられます。現在のところリチウムイオン電池の電極部材はほとんどが中国製です。特に負極は黒鉛が主成分であり、原料の採掘及び加工は中国で行われています。三元系正極に使われるCo、Ni、Liと言った金属の産出は中国以外の国がメインですが、産出後の精製工程の大部分は中国で行われています。硫酸コバルトは70%以上、硫酸ニッケルは15%以上(ロシアの21%について二番目に多い)、水酸化/炭酸リチウムの60%以上が中国で精製されています。IRAによって素材の供給構造を変えていく場合、大きな変化が必要になり、2023年はそのための動きが見られる可能性があります。

あとがき

日本が得意とするハイブリッドのシステムは極めて合理的でCO2的にもLCAで考えると現在はEVより優れていると私は思います。「現在は」と申し上げているのは、LCAのCO2排出量の計算は電気の作り方によって変わる為、EVのCO2の排出量が変わる可能性があるからです。一方で、世の中の常として必ずしも合理的なものが世界中に普及するというものではなく、様々な思惑や競争環境の中で結論が出されていくものと思います。

私自身、EV開発にかかわり始めたのは15年前のことですが、当時はEVが普及すると考えていた人は自動車業界にはほとんど居なかったと思います。実際に開発している自動車会社の中でも“色物”の扱いであったことは否めません。それが今は隔世の感であり、ここまで勢いのついた欧州や中国は元の内燃機関に戻ることは無いでしょう。

皆様のお仕事でもEV化の流れに乗って変革を考えられている方もいらっしゃると思います。私共ブルースカイテクノロジーには電動車開発の経験豊富なメンバーが揃っていますのでお気軽にご相談いただければ幸いです。

EV化の波が一層高まるであろう本年もどうかよろしくお願いします。

ブルスカイテクノロジー(株)
代表取締役
矢島 和男

 ブルースカイテクノロジー(株)は20年から30年以上自動車業界で働いてきた人員が多数を占める、自動車の電動化および関連技術に特化した特異なコンサルティング及びエンジニアリングサービス会社です。
 電動車両の開発・設計、車両の動的評価、分解調査、車両制御、モータ制御、リチウムイオンバッテリの研究開発や生産ラインの立ち上げといった専門的なご依頼はもちろん、各自動車コンポーネントの電動化コンサルティングや、新素材の電気自動車への適応コンサルティングまで、お客様のニーズに合わせたサポートが可能です。